焼き肉を家庭に浸透させた「焼き肉のたれ」

 家庭料理の中でもポピュラーな焼き肉。簡単に家庭で楽しめるようになったのは「焼き肉のたれ」の登場でした。しょうゆをベースに様々な原材料を絶妙に配合した風味は、老若男女に受け入れられています。
 今では当たり前となった家庭料理のひとつ、焼き肉。戦後の高度経済成長に伴って国民の食生活が豊かに、そして多様化し、それまでは魚介類が中心だった家庭の食卓にも数々の肉料理が上るようになりました。しかし焼き肉店が街中に次々と開店しても、それを家庭で食べる習慣はありませんでした。鍵を握っていたのが、独特の風味をもつ「たれ」でした。
 そんな中、荏原食品(現エバラ食品工業)の創業者・森村國夫氏は、「焼肉をなんとか家庭に持ち込めないものか」との思いから試行錯誤を繰り返し、ついに1968年に「焼肉のたれ・朝鮮風」を発売、これが家庭における焼き肉を普及させるキッカケとなりました。
 しょうゆをベースに、砂糖、果実類(りんご、レモン)、野菜類、食塩、白ごま、ごま油、蜂蜜、もろみ、香辛料、にんにく、みそ、りんご酢など、様々な原材料からつくられた焼き肉のたれは肉によく馴染むだけでなく、焼くと香ばしく、さらに食欲を増進させることから、老若男女に広く受け入れられました。そして1991年の牛肉の輸入自由化が飛躍的な牛肉需要の増加を後押しし、焼き肉のたれ市場も急進的に市場を拡大させました。今ではポピュラーな家庭料理のひとつとなった焼き肉。現在では焼肉のつけだれとしてだけでなく、炒め物の味付けなど「汎用調味料」としても活用され、今後も需要は伸びていきそうです。