独特な製法の民族酒「清酒」

 時には「国酒」とも呼ばれるほど長い伝統をもつ、日本食に最も合うお酒のひとつです。全国各地に古くから酒蔵が点在している「非寡占市場」であることも特長です。
 奈良朝時代に編纂されたとされる「播磨風土記」に、米を原料とした酒についての明らかな記述があるように、清酒(日本酒)は古代から“民族の酒”として愛飲されてきたコメ由来の醸造酒です。すでに平安初期には、現代とほぼ変わらない製法でいろいろなタイプの酒が造られていたようです。
その製法は独特です。ひとつは糖化と発酵を同時に進行させる高度な「並行複発酵」。このことで、唯一アルコール分が20度程度も出る醸造酒が誕生するのです。もう一つは、すでに室町時代から行なってきた、搾った酒を貯蔵前に65度程度に加熱・殺菌し、酵素の動きを止めて香味の熟成を増す「火入れ」です。
 清酒は醸造用アルコール添加の有無やその量、精米歩合などから、大きくは普通酒と特定名称酒に分けられます。さらに、特定名称酒は吟醸酒、純米酒、本醸造酒に分けられます。この分類を基本に、生酒、生貯蔵酒、樽酒など実に多くのタイプが存在しています。
 清酒の消費量はピーク時に比べて大きく減っていますが、日本食に最も合うお酒として、根強い人気があります。最近は海外の日本食ブームに合わせるかたちで、清酒の海外消費が伸びています。国内でも、お燗など昔からの美味しい飲み方の工夫や、良き伝統を再考することで、清酒のプレステージが再び高まることも十分考えられます。(参考URL:日本酒造組合中央会 https://www.japansake.or.jp/)